採用サイト、ちゃんと作っていますか?求職者の求める効果的なコンテンツとは
企業の採用活動において、「採用サイト」の占める役割が大きくなっています。求職者は応募したい企業の情報をインターネット上のさまざまな媒体から集めているからです。企業と求職者のインターネット上の接点には、採用サイトや企業Webサイト、就職・転職ポータルサイト、SNSなどがあります。中でも、採用サイトを上手に活用することで、多くの求職者に企業の魅力を伝えることができ、人材獲得につながります。
ここでは、採用サイトの作成を考えている採用担当者や経営者に向けて、採用サイトの重要性や作るべきコンテンツについて解説します。
目次
採用サイトとは?
採用サイトとは、求人募集をしている企業が、採用のためだけのコンテンツを集めて作成するWebサイト(オウンドメディア)です。顧客向けの情報ではなく、求職者向けの情報のみに絞って運営されているところに特徴があります。少し前までは、求職者はリクナビやマイナビといった採用ポータルサイトで求人情報を獲得するのが当たり前でした。しかし、ポータルサイト上では掲載できる情報量にも限界があり、他社との差別化も付けにくいです。そこで、より豊富なコンテンツを持った採用サイトを作成し、多くの求職者にアピールする必要があります。
リクルートジョブズの調査によると、求人メディア利用者のうち、8割が企業の採用ホームページも閲覧。閲覧した中で6割は「応募意欲が高まった」と答えています。このデータからも、採用サイトが大きな意義を持っていることが分かります。※参考:https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruitjobs/press/pr20190708_1119.html
企業ホームページとはどう違う?
採用サイトは、企業情報などを載せたいわゆる「企業ホームページ」とは違うWebサイトです。「会社のホームページがあるから、採用サイトは不要」と思われる方もいるかもしれませんが、それは違います。企業ホームページは、投資家や顧客、取引先などに向けた情報(製品やサービスの情報、会社情報、プレスリリースなど)を伝えるのが役割。採用サイトは求職者向けの情報だけをまとめたコンテンツです。それぞれ求められている内容が全く違うので、別のメディアとして展開する方が情報を無駄なく伝えられます。
採用サイトはなぜ必要?採用活動で果たす役割
採用サイトは、求職者にむけて情報を伝える上で、以下の役割を果たします。
枠にとらわれず、企業の魅力を発信できる
自社の採用サイトは、載せられる情報の量も内容も自由に決められます。採用サイトのように画像枚数や載せられるコンテンツに制限がないので、自由に企業の魅力を発信できます。また、掲載料や広告料も必要ありません。
応募への意欲を高められる
企業のカラーを伝えることで、応募への意欲を高められます。応募数が増えれば、それだけ良い人材と出会える確率が高まります。
採用サイトでは多くの情報を発信できるので、採用ポータルサイトや企業訪問、企業説明会では伝えられない情報が伝わります。求職者にとって、職務内容や労働時間、賃金の情報はもちろん大切ですが、長い時間を過ごす職場の雰囲気を重視する求職者も多いです。エン・ジャパンの調査によれば、女性の転職者のうち、9割は「職場の雰囲気を重視する」と回答しています。※参考:https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/15308.html
会社の雰囲気や働いている様子、1日のスケジュール、入社後のキャリアビジョンなどが見られることで、自分が実際にその会社で働いている姿がイメージできます。具体的にイメージさせることで、志望度合いを高められます。
人材のミスマッチを防ぐことができる
たくさんの情報を出せば出すほど、その内容に共感する人のみが応募するようになります。つまり、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。求人票記載の情報のみで入社すると、「思っていた仕事と違う」「イメージと違う」とミスマッチにつながり、早期離職の可能性が高まります。せっかく採用した人材に長期に渡り活躍してもらうためにも、応募の段階でしっかり情報を開示して、見極めてもらうことが大切です。
採用サイトのコンテンツの種類
採用サイトに掲載するコンテンツには、重要度の高い順から次の3つがあります。
1.必ず用意しておくべきコンテンツ
2.用意できれば差別化につながるコンテンツ
3.費用と相談するべきコンテンツ
ここからは、上記の3つについてそれぞれ解説します。
必ず用意しておくべきコンテンツ
採用サイトは、求人に応募してもらうために存在します。求人応募に対する判断材料になるように、採用サイトには次のコンテンツを記載しましょう。
●募集要項(業務内容・募集職種・募集条件)
●選考プロセス
●応募方法
●会社概要
採用サイトにおけるもっとも重要なコンテンツは募集要項です。募集要項を明確にすると「条件に合った人材からアプローチがくる」「求職者がその会社で働くイメージがしやすい」などのメリットがあります。選考プロセスは応募から採用までの流れです。選考プロセスを具体的に提示すると、求職者がスケジュールを立てやすくなり、応募増加につながる可能性があります。
用意できれば差別化につながるコンテンツ
他社と差別化をするためには、次のコンテンツも用意しましょう。
●1日の流れ
●研修の制度
●社員インタビュー
●よくある質問
●福利厚生
これらのコンテンツは他社との差別化につながるほか、求職者が入社後の自分をイメージしやすい効果があります。特に1日の流れや社員インタビューは、入社後の働き方の創造につながります。働き方や考え方が比較的似ている若手社員や歴の浅い社員が行うと、求職者が親近感を覚えやすくなります。
また、よくある質問も記載すれば、応募から入社にいたるまでに求職者が抱く疑問や不安を解消できるでしょう。
費用と相談するべきコンテンツ
採用サイトにおいて必ず必要なコンテンツではないものも、設置すると求職者へのアピールが可能です。次のコンテンツは、費用と相談して掲載を検討しましょう。
●写真や動画を使ったオフィスツアー
●数字で見る会社資料
●社員によるトークセッション
写真や動画を使ってオフィスの様子を載せると、求職者が雰囲気を掴みやすいといえます。数字で見る会社資料に関しては、自社の平均年齢や男女比、有給取得率などの数字化により会社の良いところをアピールできるでしょう。また、トークセッションとは社内の社員同士の会話を記録したコンテンツです。実際に社員が対話すると、求職者が社内の人間関係をイメージしやすくなります。
採用サイトのコンテンツ作成方法
採用サイトのコンテンツを作成する際に押さえたいポイントは下の3つです。
●ターゲットを定めて掲載情報を検討・精査する
●サイトマップを作成し、構造を明確化する
●デザイン制作、コーディングへ
ここではそれぞれについて解説します。
ターゲットを定めて掲載情報を検討・精査する
最初に「どのような人材を採用したいのか」というターゲットを定めます。 具体的には以下の情報を考慮します。
●年代
●学歴や職歴
●スキル、スペック
●コミュニケーション力
●専門知識
これらを明確にすれば、自社の社風や応募職種にマッチした人材を採用しやすくなるでしょう。
このターゲット設定は、通常のサイトやコンテンツ作成における「ペルソナ設定」と同じです。細かいペルソナを設定すると特定の人物像がイメージでき、ターゲットに対する訴求力が高まります。
サイトマップを作成し、構造を明確化する
ユーザーや検索エンジンがサイトの構造を理解できるように、サイトマップを作成してサイト全体の構造を整理しましょう。採用サイトに載せるコンテンツを吟味した後、掲載コンテンツをカテゴリー別に分類します。
サイトマップの一例を紹介します。
サイトマップは基本的に制作会社が作成することが多いです。サイトマップがあると、メニューからその先に繋がる下層ページが視覚的に理解でき、導線の見直しもしやすくなりますよね。ナビゲーションを明確にして、求職者が情報にアクセスできるように打合せを重ねていきます。
デザイン制作、コーディングへ
ターゲットや採用サイトの構造が確定したら、デザイン制作とコーディングへ進みます。
採用サイトのデザインで意識するポイントは次の3つです。
●トップページのデザイン性やキャッチコピーでインパクトを出す
●必要な情報にすぐにアクセスできる構造を作る
●ターゲット層に合わせたデザインを意識する
採用ターゲットが求める情報を掲載すれば「この会社で働きたい」と思ってもらえるでしょう。
また、ターゲット層に刺さりやすいデザインを行うことでより興味が湧き、企業への印象も良くなります。コーポレートサイトは固めのデザインでも、採用サイトはポップだったりアットホームだったりと全く違う雰囲気で制作している企業も多くあります。
採用サイトのコンテンツを作るときのポイント
採用サイトの目的は、求職者に「この会社で働きたい」と思わせることです。そのために、採用サイトでは求職者のニーズにあったコンテンツを掲載する必要があります。ここでは、採用サイトのコンテンツを作成するときのポイントを解説します。
ターゲットやコンセプトを明確化する
採用ターゲットや、採用サイトのコンセプトは明確にしましょう。採用ターゲットの設定をすると自社の社風や応募職種にマッチした人材を採用しやすくなります。
採用サイトにおけるコンセプトは、「求職者に対してどのようなメッセージを伝えたいか」という方針です。例えば、ビジネスチャットツールを生んだChatwork株式会社のコンセプトは「野心と確信」です。向上心のある求職者へのアピールが分かります。
対象ごとにサイトを分離する
新卒採用と中途採用でサイトやページを分けましょう。
新卒採用と中途採用では求められるスキルや経験、思考が異なります。それぞれのターゲット層に合わせた情報提供をしましょう。例えば、就職活動で就活生が重視する働き方は「働きやすさ」を、転職活動で転職者は「今後のキャリアビジョン」を重視する傾向にあります。そのため、新卒採用のサイトでは「1日の流れ」や「社員インタビュー」、中途採用のサイトでは「キャリアビジョン」を載せると、それぞれのニーズを満たせます。
閲覧のしやすさを重視する
採用サイトを作る際は、求職者にとって閲覧しやすいサイトを作りましょう。求職者に企業の魅力が伝わりやすくなり、結果として応募率の向上に寄与します。見やすい採用サイトは、以下のようなサイトです。
●採用情報や企業情報などの必要情報が整理されている
●求職者にとって見やすいデザインが施されている
求職者にとって必要な情報を整理し、見やすいデザインを施すことは、採用サイトを作る上で重要なステップといえます。いくらおしゃれに作っても、どこに何があるかわからないサイトでは、すぐに離脱されてしまいます。
裏付けとなる数値を明確に記載する
採用サイトでは、裏付けとなる数値を明確に記載します。実際の数値や統計データを提供すると、企業の発信内容に信頼性と説得力が生まれるでしょう。次の情報は、数字や統計データで記載しましょう。
●男女比率
●勤続年数
●有給消化率
●平均残業時間 など
例えば「うちの会社は残業する人が少ない点が特徴です」よりも「先月の平均残業時間は◯◯時間です」と書いている方が、当然説得力があります。あいまいな言葉で表現せず、数値として客観的に表すことが重要です。
分かりづらい情報を視覚的にする
分かりづらい情報をまとめるときに利用する手法が、インフォグラフィックです。上記の「裏付けとなる数値」もインフォグラフィックを活用して紹介している企業が増えています。次の情報も文字だけでは伝わりづらいので、グラフや図で表すのがおすすめです。
●従業員数
●平均年齢
●職種比率
●拠点数 など
文字だけでなくグラフや図を用いると、見た人の記憶に残りやすく、飽きずに読み進められるというメリットがあります。インフォグラフィックを用いて、求職者の印象に残るサイトを作りましょう。
動画を適切に利用する
採用サイトでは、動画も適切に使うことで自社の魅力や情報をアピールできます。採用サイトで動画を使うメリットは次の4つです。
●印象に残りやすい
●会社のリアルを伝えられる
●情報が正確に伝わりやすい
●採用業務における工程を減らせる
動画手法を採用している企業の例として「マルコメ株式会社」があげられます。マルコメ株式会社では、ある1人の社員に密着し、社内での業務や日常をテレビ番組のような編集で発信しています。
ファーストビューを意識する
採用サイトでは、ファーストビューを意識して求職者の興味や関心を惹きつけましょう。ファーストビューは、ユーザーがサイトを開いたときに最初に表示される画面を指します。採用サイトにおいては会社の第一印象になり得る重要なコンテンツです。ファーストビューでは、最低限次のコンテンツを取り入れましょう。
●メインビジュアル
●キャッチコピー
●資料請求や問い合わせのボタン
メインビジュアルやキャッチコピーで求職者の心を惹くことができれば、資料請求や問い合わせにつなげられます。
トレンドは?採用サイトに求められるコンテンツ
採用サイトは企業が自由に作成できる分、「何を載せていいかわからない」と手が止まってしまうリスクもあります。そこで、魅力的な採用サイトに掲載されているコンテンツについて、簡単に紹介します。これらのコンテンツをもとに作成すれば、求職者の求める内容をアピールできますので、参考にしてください。なお、デザイン上のトレンドや見た目の遊び心を追求するのも大事ですが、それよりも「コンテンツの質」が重視される傾向にあります。ついつい凝ったデザインやアニメーションでのインパクトを考えがちですが、あくまでも「中身第一」で進めましょう。
事業内容
そもそも何をやっている会社なのかを伝えます。将来性や成長性に期待する求職者も多いので、しっかりアピールしましょう。背景にある理念や思いを伝えると、より深い理解が得られます。
仕事の内容
どのような部署があり、それぞれがどんな仕事をしているのか。実際の写真や動画を踏まえて、リアルにイメージしてもらえるように紹介しましょう。
働く人や社風
どんな人が働いているのか、先輩社員へのインタビューコンテンツは鉄板です。会社独自のルールや習慣などがあれば、それも余すことなく伝えましょう。実際のオフィスや共用部の写真も掲載するといいですね。
選考プロセス
どのようなフローで選考が進むのか、スケジュールなどをまとめて分かりやすく提示しましょう。
数字でみる福利厚生
先述したインフォグラフィックを活用して福利厚生の強みを伝えていきましょう。求職者の関心が高い、ワークライフバランスを深堀りしていくことがおすすめです。産休・育休、その他の休暇制度の紹介や、実際の取得状況などが書かれていると求職者の不安感を減らすことができます。
採用動画
実際の働いている様子や社員インタビューは、動画で作成するのもおすすめです。スマホで簡単に撮影できるので、コンテンツを執筆するよりもむしろハードルは低いとも言えます。
いずれも、飾った内容を掲載するのではなく、あくまでも赤裸々に会社の情報を伝えるのが大事です。時にはデメリットとなり得る情報でも、伝えることで信頼感も増します。ありのままの会社を知ってもらえるよう、さまざまな角度からコンテンツを作成しましょう。
採用サイトを活用して、良い人材と出会おう
採用サイトは、いい人材とつながるための一番の手段です。求職者の求めるコンテンツを作成していく中で、求める人材像もより明確になり、採用活動もよりスムーズに進むはずです。会社のカラーを上手に伝え、より多くの人材からの応募が得られるような採用サイトが作成できるといいですね。