テレビCMの広告効果とは|測定方法や効果を高めるポイントを解説

インターネットの普及によって、相対的に影響力が弱まっていると言われていますが、現在でもテレビCMには高い効果が期待されています。この記事では、CMの効果測定方法や、消費者に対する効果を上げる方法について解説します。
目次
テレビCMの現状
テレビCMは、番組の途中や番組間に放送される広告で、企業がテレビ局のCM枠を購入することで配信されます。2019年にはインターネット広告費がテレビCMを上回りましたが、現在でもテレビCMは広告媒体として第2位の地位を保っています。
テレビCMのメリットは、短時間で多くの視聴者にリーチできる点や、視聴者の記憶に残りやすい訴求力がある点です。総務省の『令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』(https://www.soumu.go.jp/main_content/000887659.pdf)によると、メディアの信頼性に関する調査では、インターネットが30.8%であるのに対し、テレビは53.1%と最も高く評価されています
テレビCMの効果
テレビCMは、短時間で幅広い層にリーチできるだけでなく、ブランド認知の向上や購買行動の促進にもつながります。テレビCMがもたらす具体的な効果について、視聴者へのアプローチ方法や検索行動などについて考えましょう。
幅広い層にすばやくアプローチできる
記載した通り、テレビCMの最大の強みは、短時間で多くの視聴者に情報を届けられる点です。1日に延べ数千万人にリーチすることも可能で、これはインターネット広告では多大な費用と時間を要します。
また、テレビは高齢者や子どもを含む幅広い層に届くメディアであり、総務省の「令和4年度 情報通信白書」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r04.html)によると、世帯普及率も2人以上の世帯で96.2%と非常に高水準です。
SNSや動画サイトでは届きにくい層にも自然に訴求できるため、テレビは「日常に溶け込むマスメディア」として多様なターゲットへ迅速にアプローチできます。こうした広範囲な到達力は、他メディアでは得難いテレビCMならではの価値といえるでしょう。
指名検索を増やせる
テレビCMをきっかけに企業名や商品名を検索する「指名検索」が近年増加しています。指名検索とは、視聴者がCMで気になったブランド名をその場でスマートフォンから検索し詳細情報を取得する行動です。特にブランド名を認知してもらうことで、将来的なニーズ発生時にも一般的な検索ではなく、指名検索される確率が高まります。
こうした行動によって、競合と比較されずに選ばれる可能性が高まり、結果としてCPA(顧客獲得単価)も抑えられるという大きなメリットとなります。テレビCMは単なる認知拡大だけでなく、実はユーザーの検索行動を促すきっかけとしても重要な役割を果たします。
ブランドイメージや商品の認知度が高まる
テレビCMは、視聴者の記憶に残る繰り返し訴求によって、ブランドイメージを強く印象づけることができます。番組の合間に繰り返し流れることで、商品から想起されるイメージを定着させる効果が期待できるでしょう。
また、テレビCMは審査が法的な観点や自主規制が厳しく、信頼性の高いメディアだといわれています。そのため、テレビCMそのものがブランディングの一環として機能し、企業や商品の信用力を高める手段となります。こうした点がブランド想起率や商品認知度の向上に役立つ手法だといえます。
商品やサービスの売上が向上する
また、単なる認知手段にとどまらず、視聴者の購買意欲を高め、売上向上に直結するメディアです。CMを通じて商品やサービスに対する信頼を築くことで、「テレビCMで紹介されているなら安心」「信頼できる企業が扱っている」という心理的効果が働きます。
つまり、視聴者の購買決定を後押しし、購入までのハードルの引き下げに効果的です。 また、一定期間CMを継続的に放映することで、販売店での購入率やECサイトへの流入率が向上する成果も多く報告されています。テレビCMは、信頼と印象の両面から消費者の行動に影響を与える重要な販促手段といえます。
テレビCMのデメリット
テレビCMならではの、広告としての課題も存在します。インターネット広告と比較して、ターゲット設定や費用対効果の計測が難しい点があげられます。また、放映費が発生するため、制作費が高額になる傾向も見逃せないでしょう。
細かなターゲット設定が難しい
テレビCMは、放送する番組や時間帯をもとに配信対象が決まるため、インターネット広告のように個人の行動データをもとにした細かなターゲティングは困難です。特定の番組に狙いを絞っても、その視聴者すべてがターゲット層とは限らず、商品やサービスに無関心な層にも広告が届きます。視聴者属性にある程度の傾向が見込めても、広告が非効率的になる可能性があるでしょう。
たとえば、若年層向け商品のCMを深夜アニメに放映するような工夫は可能ですが、見込み客への効率的なアプローチという点では、Web広告に比べて精度が劣るのが現状です。この点は、配信精度の高いデジタル広告との大きな違いといえるでしょう。
CM制作のコストが高い
テレビCMを出稿するには、映像制作費と放映費の両方が必要です。映像のクオリティや長さ、出演者の有無によって制作費は大きく変動します。数十万での制作も可能ですが、ブランディングとしての役割やクオリティを考慮すると、百万円以上はかかり、決して安いものではありません。しかし、1回の放映でリーチできる視聴者数が非常に多いため、費用対リーチ効率という観点では、現在でも優れたメディアであるといえます。
例えば東海エリアに向けて100万円の広告予算を使用した場合、新聞であればリーチ数は36.5万人(※)なのに対し、テレビCMであればリーチ数440万人(※)に届く見込みです。
※印刷費 2.85円、折込3.45円とした場合。※1世帯2.3人と想定。
※視聴率1%=25,000円と想定。※時期、局、枠の状況によって変動します。
費用対効果の計測が難しい
テレビCMの効果測定では「誰がCMを見たのか」「その結果として購買や検索に至ったのか」の正確な追跡が難しいという課題が存在します。アンケート調査や視聴率データ、指名検索数の数値変化から効果を推定することは可能ですが、インターネット広告のようにリアルタイムで個別に計測する仕組みは整っていないのが現状です。
ブランドリフト調査や想起率調査などの手法はありますが、測定結果までに時間がかかったり、結果の解釈が曖昧になりやすいなどのデメリットもあります。そのため、広告主は明確なKPI設計や、他チャネルと連携したトラッキング設計を行うことが求められます。計測の「見える化」は、テレビ広告活用における今後の課題のひとつです。
テレビCMの効果測定方法
テレビCMの効果測定方法について、検証しましょう。テレビCMは直接的な効果測定方法が存在しないため、ブランドリフト調査やWebサイト分析などの方法で、効果を測定します。電話や対面、インターネットを活用する測定方法です。
ブランドリフト調査を行う
テレビCMの効果を測定する際、売上だけでなくブランドに対する認知度や好意度、購買意向の変化を測る手法として、ブランドリフト調査があります。これは、マーケティング活動によって、生活者のブランドに対する意識が、どれだけ変化したかを把握するための指標です。
具体的には、Web上でのアンケートや調査会社による対面調査、電話調査などを用いて、CMの視聴前後で「そのブランドを知っていたか」「好感を持ったか」「購入したいと思ったか」などを比較します。
ブランド構築は長期的な成果を伴うため、こうした定性的な調査を定期的に実施することで、テレビCMの真の効果を可視化しやすくなります。
Webサイトを分析する
テレビCMの効果測定には、自社のWebサイトへの流入データを分析する方法も有効です。たとえば、CM放映前後のアクセス数や、ブランド名・商品名などの指名検索数の推移を観察することで、CMによる興味喚起の度合いを推定できます。
CMの放送直後にアクセスが急増した場合、それは視聴者が興味を持ち、自ら情報を探しに来た結果といえます。また、放映期間終了後もアクセスが継続して増加する場合は、ブランド認知や信頼感の醸成に成功したと判断できるでしょう。
テレビCMの効果を高めるポイント
最後に、テレビCMの効果を高める工夫について解説します。テレビCMにおいては、ターゲットの明確化や目的の設定が、効果の最大化を左右します。タイムCMなのか、スポットCMなのかを考慮して、的確な広告発信を心がけます。
ターゲットや目的を設定する
テレビCMの効果を最大化させるには、ターゲットと目的の明確化が重要です。ターゲットが曖昧の場合、訴求内容やクリエイティブの方向性が定まらず、伝わりにくいCMになってしまいます。ターゲットが明確になることで、その人物像に基づいてインサイト分析を行い、行動傾向や求めている情報の把握が可能です。
そのうえで、該当する層の視聴が多い番組や時間帯を選定することで、効率的にCMを消費者へ届けられます。テレビCMの出稿前には、社内でCMの目的が認知拡大なのか購買促進なのかなどを明確にし、戦略的な広告計画を実現しましょう。
目的に合った広告の種類を選ぶ
テレビCMには主に、タイムCMとスポットCMの2種類があり、目的に応じて使い分けることが重要です。タイムCMは特定の番組のスポンサーとして放送する形式で、番組のイメージと商材の親和性が高い場合にブランド価値を高める効果があります。ただし、6か月契約が基本のため、中・長期的な訴求に向いています。
一方、スポットCMは番組を指定せず、特定の時間帯にランダムで放送されるスタイルです。そのため、短期集中での露出が可能です。たとえば、セールや新商品の告知、イベントの集客など一時的な盛り上げ施策に適しています。
ターゲットに合わせてCM制作を工夫する
テレビCMは15秒または30秒と限られた時間内で、印象的かつ記憶に残る表現が求められます。情報過多の現代においては、ターゲットが関心を持ちやすい構成や演出を工夫しなければ、記憶に残りにくいCMとなってしまいます。
特に指名検索や購買行動につなげるには、ブランド名や商品名を明確に記憶してもらう必要があります。キャッチーなフレーズやリズム感のある音楽、視覚的にインパクトのある演出が効果的です。たとえば、生活者の記憶に残りやすいフレーズを繰り返す、共感を呼ぶストーリーを盛り込むなど、ターゲットの心に刺さる表現を追求したCM制作が成果を左右します。
まとめ
広告宣伝活動において、現在でもテレビCMは重要なポジションを占めており、戦略次第で、商品やサービスの売上を大きく左右します。出稿量ではインターネットに抜かれたとはいえ、一度にまとまった消費者に対してリーチできるメディアとして、テレビは最も適した媒体と言えるでしょう。テレビならではの特性を理解し、テレビ視聴者へ向けて、消費需要を喚起するCM制作が重要です。