インバウンドマーケティングとは|注目される理由や効果・方法を解説
インバウンドマーケティングは、顧客を多く獲得するための手段として近年注目されているマーケティング手法です。この記事では、インバウンドマーケティングの概要や注目される理由、メリット・デメリット、実践の流れ、主な手法を解説します。
目次
インバウンドマーケティングとは
インバウンドマーケティングとは、顧客が求めるコンテンツや体験の創出によって、顧客を惹きつけてファンに転換するマーケティング手法を指します。
ユーザーが興味を持つ事柄や役立つ情報などを発信することが、この手法の核です。自社の製品・サービスと関連する情報を収集しているユーザーとの接点を創出することで、認知の拡大や営業活動の効率化が図れます。
インバウンドマーケティングとほかのマーケティング手法の違い
インバウンドマーケティングと比較されることが多い概念に、アウトバウンドマーケティングがあります。また、インバウンドマーケティングと似通った概念としてコンテンツマーケティングが挙げられます。
アウトバウンドマーケティングとの違い
アウトバウンドマーケティングとは、ダイレクトメールや展示会などで情報をユーザーに発信するプッシュ型のマーケティングです。顧客を引きつけるプル型のインバウンドマーケティングとは対の関係となります。
アウトバウンドマーケティングの例
・テレビやラジオのコマーシャル
・新聞広告
・折り込みチラシ など
従来的なマーケティング手法ですが、短期間で成果を獲得しやすいメリットがあります。一方で、一方的なコミュニケーションになりやすく、顧客が望んでいない情報を届けてしまう可能性もある点がデメリットです。
コンテンツマーケティングとの違い
コンテンツマーケティングとは、見込み顧客視点で価値あるコンテンツを制作・配信することに焦点を当てたマーケティング戦略です。インバウンドマーケティングと似ていますが、顧客を引きつけるための手法がコンテンツ制作に限定されます。このことから、コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングにおけるひとつの手法といえます。
コンテンツマーケティングでは、コンテンツを通じて自社および自社の商品・サービスなどについての認知度を高めたり、見込み顧客の広告情報に対する関心を引き出したりすることが可能です。
インバウンドマーケティングが注目される理由
近年、インバウンドマーケティングが注目されるようになった背景には、広告業界を取り巻く社会環境の変化があります。顧客購買行動の変化や従来の広告手法の限界、マーケティングのデジタル化などさまざまな要因に対応するため、多くの企業がインバウンドマーケティングの取り組みを強化しています。
顧客購買行動の変化
顧客の購買行動の変化は、インバウンドマーケティングを成立させる要因の一つです。インターネットの普及によって、顧客は従来より簡単に製品やサービスの情報を手に入れられるようになりました。それに伴って顧客の購買行動も変化しています。
近年の消費者は自ら情報を収集し、評価やレビューを重視して商品やサービスを選ぶ傾向が強くなっています。また、ECサイトの普及によって、気に入った商品があれば実店舗に足を運ばなくてもすぐに購入できるようになりました。消費者への情報提供が核となるインバウンドマーケティングは、このような購買行動と親和性の高いマーケティング手法といえます。
アウトバウンドマーケティング効果の限界
インバウンドマーケティングが普及した要因として、従来的なアウトバウンドマーケティングが社会環境とマッチしなくなったことが挙げられます。
インターネットの普及によって知りたいことを自力で調べやすい環境となり、自分に不必要な情報をシャットアウトする人も増えました。これにより、企業からの一方的な情報提供によって成り立つアウトバウンドマーケティングは、以前に比べ効果が弱くなったとされています。自ら情報収集を行う消費者にアプローチするためには、そのニーズに合った情報を提供するインバウンドマーケティングの方が向いていると考えられます。
マーケティング 活動のデジタル化
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に進行したマーケティング活動のデジタル化は、社会におけるインバウンドマーケティングの基盤となっています。
大型イベントへの出展・対面での営業を控えざるを得なかった状況は企業のWebサイト運用への注力につながり、結果的に顧客との接点が多様化しました。SNS・検索エンジン・動画コンテンツなど、多様なオンラインチャネルから顧客と接点を持つ環境が整ったことが、インバウンドマーケティングの拡大につながっていると考えられます。
インバウンドマーケティングのメリット・デメリット
インバウンドマーケティングは従来とは異なるマーケティング手法のため、既存の方法にはなかったメリットやデメリットがあります。これらのメリット・デメリットを理解して取り組むことが重要です。
インバウンドマーケティングのメリット
インバウンドマーケティングではインターネットを介して情報提供を行うことから、以下のメリットが期待できます。
インバウンドマーケティングのメリット
・顧客満足度が高まる
・費用対効果が高い
・データが分析できる など
インバウンドマーケティングでは、顧客の望む情報を提供することで顧客満足度を高められます。また、情報をインターネット上で拡散できるため、少ない費用で多くの人に情報を行き渡らせられる可能性があります。広告を受け取った人の人数だけではなく、クリック数や視聴維持率など幅広い指標で広告の有効性を分析できる点も特徴です。
インバウンドマーケティングのデメリット
インバウンドマーケティングはターゲットとなる顧客に効率的に情報を提供するために有用ですが、従来の方法と比べて劣っている部分もあります。
インバウンドマーケティングのデメリット
・効果が出るまでに時間がかかる
・コンテンツ制作に人的・時間的コストがかかる
インバウンドマーケティングは効果が出るまでに時間がかかることから、アウトバウンドマーケティングの方がより早く顧客に訴求しやすいといえます。また、顧客に興味を持ってもらえるような、質の高いコンテンツを制作する必要があるため、人的・時間的なコストがかかりやすい点もデメリットです。
インバウンドマーケティングの4フェーズ
インバウンドマーケティングには大きく分けて4つのフェーズがあり、それぞれの段階で行う施策が異なります。
インバウンドマーケティングにおける各フェーズ
各フェーズの名称 | 概要 |
---|---|
Attract(惹き付ける) | ・インバウンドマーケティングの最初のフェーズ ・魅力的なコンテンツでターゲットを惹き付ける ・見込み顧客の課題やニーズを想定し、興味のありそうな内容を配信してアクセスを促す |
Convert(転換する) | ・問い合わせにつなげる/見込み顧客情報を獲得してリード化するフェーズ ・ホワイトペーパーやメルマガなどで価値ある情報を提供し、顧客情報を獲得する |
Close(顧客化する) | ・契約や購入を通じて顧客へ転換するフェーズ ・顧客の検討や意思決定を尊重しつつ商談を進める ・購買意欲が不十分な場合はタイミングが重要 |
Delight(満足させる) | ・既存顧客の満足度を高めるフェーズ ・限定コンテンツやサポート強化で好印象を維持し、ファン化と紹介を促進 |
1段階目(Attract)でターゲットを惹き付け、2段階目(Convert)では広告に対してターゲットからアクションを起こしてもらえるような施策を行います。
3段階目(Close)では見込み顧客から顧客になってもらえるような施策によって商品・サービスを購入してもらいます。
商品・サービスの購入後は、4段階目(Delight)として長期的に企業・サービスを支持してもらえるように努めることが欠かせません。
インバウンドマーケティングの実践【5STEP】
インバウンドマーケティングを実施する際は、必要な施策がどのようなものかを段階的に分析しながら進めることが重要です。ここでは、インバウンドマーケティングを実施する流れを5つの段階に分けて解説します。
【STEP1】目的・目標を明確にする
インバウンドマーケティングを始めるときは、具体的な期限・数値目標などを設定し、どのような施策を行えば目標を達成できるのかを考える必要があります。
目標達成に向けて、「どの程度の予算をかけられるのか」「担当する部署や役割はどうするのか」などの、社内体制の検討も欠かせません。予算内で目標を達成できるように、行うべきことと不要なことを見極めてマーケティングの方針を決めることがポイントです。
【STEP2】現状を把握する
マーケティングの目的や目標が定まったら、自社の現状を正しく把握します。また、自社の現状を競合他社と比較し自社の強みと弱みを浮き彫りにすることも、独自のマーケティング戦略を打ち立てるために役立ちます。
現状把握の項目
・現在までに行われたマーケティング活動の成果や課題
・ターゲットのニーズ
・競合他社の状況 など
現状を把握したうえでどこに改善が必要なのかを明確にすることで、効率的なマーケティング戦略が策定しやすくなります。
【STEP3】戦略を立案する
目標・目的に対する自社の状況を把握できたら、それをもとに具体的な戦略を立てます。インバウンドマーケティングの戦略を立てるためには、ターゲットとなる市場・顧客層の具体像(ペルソナ)について詳細に定義することが欠かせません。
ペルソナの項目例
・年齢
・性別
・業界
・役職
・抱えている悩み など
ペルソナの設定が不十分な状態のままマーケティングを進めてしまうと、情報や体験を提供する先が定まらないままコンテンツを作ることになり、十分な費用対効果が得られにくくなります。
【STEP4】施策を選定する
インバウンドマーケティングを行うための戦略が定まったら、具体的にどのような施策を実行するのかを決めます。近年では、企業ブログやSNSなどのオウンドメディアを活用する手法が一般的です。また、施策に適したツール・プラットフォームを検討することも欠かせません。複数のプラットフォームを併用したりさまざまな種類のコンテンツを利用したりすることで、見込み顧客の目に留まりやすくなります。
【STEP5】PDCAをまわす
インバウンドマーケティングにおいては、コンテンツは提供したら終わりではありません。成功した施策では良い点を強化し、失敗した施策は悪い点を修正しながら持続的な改善を目指すPDCAサイクルが求められます。設定目標に対して施策がどの程度効果があったのかのモニタリングを定期的に実施し、改善するべきところがあったコンテンツは修正して再公開します。これを繰り返すことで、インバウンドマーケティングの効果を高めることが可能です。
インバウンドマーケティングの主な手法
インバウンドマーケティングでは、さまざまなプラットフォームが用いられます。近年はSNSを用いたマーケティングが一般化していますが、Webサイトやメールでのマーケティングも依然として強い影響力があります。
インバウンドマーケティングで用いられる主なプラットフォーム
手法 | 特徴 |
---|---|
SNS | ・X、Instagram、Facebookなどを活用して情報発信と交流を行う ・参加型キャンペーンも可能で、拡散されやすく幅広い層にリーチ |
SEO | ・検索結果で上位表示されるよう対策する ・キーワード選定と質の高い記事で自然検索流入を促進 |
ホワイトペーパー | ・製品・課題に関する資料を、顧客情報と引き換えに提供 ・購買意欲に応じて提供内容を調整できる |
セミナー | ・直接交流し信頼構築を図る ・購買意欲の高い見込み客の集客、関係性の強化に有効 |
メール | ・見込み顧客や既存顧客に定期的に情報を提供し、関心を維持 ・パーソナライズされた内容で関連性の高い情報・オファーを届ける |
自社に合った手法を用いることで、インバウンドマーケティングを効率的に実施できます。
まとめ
インバウンドマーケティングは、従来のアウトバウンドマーケティングに代わって、近年重要視されるようになったマーケティング方法です。少ない費用で高い効果を得られる可能性を持ち、広告効果の測定や改善もしやすい特徴があります。一方で、効果が出るのが従来の方法よりも遅いというデメリットもあります。インバウンドマーケティングを行うときは、Attract・Convert・Close・Delightの4つのフェーズを意識した施策の検討が欠かせません。